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概要(D-9/“ドーラ”の位置づけ)
Fw190D-9は、空冷BMWエンジンのA型に代わり、液冷V12 Jumo 213A-1(MW50使用時 最大約2,240馬力)を搭載した長鼻型の派生型。
機首および胴体後部の延長により全長は8.95m→10.192m。垂直尾翼拡大、機首右側面に過給器吸気口が張り出す外観上の相違がある。
環状ラジエータをエンジン前面に配置して空気抵抗増大を抑え、改造範囲を主に機首に限定。
初飛行:1942年9月。本格的な高高度戦闘機ではないが、A型のような高空での急激な出力低下は改善。
量産開始:1944年8月、前線配備:同年11月ごろ、実戦投入:12月。
構造変更・推進系
エンジン:Jumo 213A-1
離昇1,776hp/高度5,800mで1,600hp/MW50(10分連続・通算40分)で最大約2,240hp/高度9,800mで約1,020hp。
機体:機首延長(約50cm)+胴体後部延長(約49cm)=寸法増/垂直尾翼拡大で安定性を確保。
冷却:環状ラジエータ採用(抵抗低減と改修簡素化の両立)。
客室:与圧キャビンは最終的に未採用。ターボ過給器も非搭載。
性能(カタログ値)
最高速度:高度6,400mで698 km/h、MW50使用・高度6,200mで732 km/h。
実用上昇限度:13,200 m。
速度向上の代償として横転性能が低下、かつ武装はA型より軽減。ただし操縦に慣れたパイロットからの評価は概ね良好。
武装・装備・派生
固定武装:MG131 13mm×2(各475発)+主翼内翼のMG151/20 20mm×2(各250発)。
装備:胴体下面にETC501/504ラックで爆装可。背面12mm防弾鋼板、前面50mm防弾ガラス。
キャノピー:初期約300機は従来型、それ以降は視界改善のガーラント・ハウベ。
全天候型R11:キャノピー除霜、無線航法/着陸誘導(FuG125)、進路指示計(LGWK23)、自動操縦(PKS12)などを装備。R11以外の改修型は実戦使用が乏しい。
開発系譜:D-1(無与圧)/D-2(与圧)という準備はあったが、量産はD-9から。なぜD-3ではなくD-9なのかは不明。
生産・配備・運用状況
生産規模:D-9とD-9/R11で約750機とする資料あり。D型合計1,805機とする資料、D-9だけで1,826機だが実戦投入は約300機とする説も併存。
背景:BMW工場への爆撃でA型生産が落ち、D-9の量産が前倒しに。
戦局:1944年末、ドイツ戦闘機隊はラインの護り作戦で大損耗。D-9自体の素性は良いが、熟練搭乗員の不足と物量差から戦局を覆せず。
評価逸話:タンク自身にとってD型は暫定・中継ぎで、本命はTa 152。これを公言したため部隊士気に影響したとされる。
性能評価をめぐる見解の分岐
野原・塩飽(1990)/野原(2003):空力洗練と軽量さ、環状ラジエータによる有利、出力の優勢(P-51の約1,450hpに対しD-9は1,750hp級)から、単純な空戦性能ならP-51を凌駕し得た可能性を指摘。
歴史群像(2010):D-9はP-51Dに匹敵とする独側評価は紹介しつつ、一般に流布するカタログ値は推算値が多く、実性能は連合軍新鋭機にやや劣るとする見解。